【ファイナンス・金融工学】おすすめテキストと有名大学の指定教科書・参考書まとめ


本記事では、日本の有名大学において開講されているファイナンス・金融工学に関する講義において、

指定されているテキスト・教科書・参考書についてまとめている。

また、その中からこのサイトおすすめのテキストを、パターン別に紹介する。

ここで紹介するテキストはファイナンスの最初の一冊に相応しいと教授陣が勧めているものと言えるから、この中から自分にあった一冊を選んで、じっくり取り組んでもらいたい。

諸注意
  • 本記事でリサーチしている「ファイナンス」とは、証券投資論や企業金融論などのファイナンス論を指す(財政論、金融システム論は含まない)。
  • 取り上げる講義は、いずれもファイナンス初学者向けもしくは中級レベルにデザインされた講義であることを条件とする。
  • 講義は日本語で行われるもののみ集計し、外国語のテキストに日本語訳版があればそちらを紹介する。

なお、紹介する大学はTHE 世界大学ランキング 日本版 総合ランキングの上位校であり、講義の多い順に掲載している。


目次


パターン別おすすめテキスト

完全な初学者(時間がある人)

『コーポレートファイナンス入門編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版

この本は世界各国のファイナンスの講義で用いられる世界標準のテキストである。

割引現在価値の考え方や、債券、株式の評価、CAPM、MM理論、ブラック・ショールズモデルなど、ファイナンスの基本的事項を幅広く網羅しているため、最初の一冊として手に取るにはとてもおすすめである。

本書は東京大学名古屋大学大阪大学京都大学のファイナンス講座の指定テキストになっている。

完全な初学者(時間がない人)

『コーポレート・ファイナンス入門』砂川伸幸(2017)、日経文庫
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コーポレート・ファイナンスは実務的にも重要な学術分野でありつつ、その基本的概念はすべてのファイナンス理論に通じている。

本書はファイナンスの基本的事項を文庫で学べるため、時間のない初学者がファイナンスに足を踏み入れるにはよい機会を提供している。

本書は早稲田大学ファイナンス講座の指定テキストになっている。

実務家でエッセンスだけ知りたい人、使えるようになりたい人

『道具としてのファイナンス』石野雄一(2005)、日本実業出版社
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この本は実務家の中で好評を得ている本であり、ファイナンスの基本的な事項を確認しながら、実際に使うことを念頭に書かれているため、有用な本である。

本書は早稲田大学神戸大学のファイナンス講座の指定テキストになっている。

理系の素養のある人

『金融工学入門』デービッド・G.ルーエンバーガー日本経済新聞出版社
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広義のファイナンスのなかで、特に資産価格や投資に関する工学的理論を探求する金融工学の入門書

数式を駆使した理論的な考え方は、ファイナンスの基礎概念を記述するのに必須となっており、初学者のうちから数学的アプローチになれておくとアドバンテージになる。

本書は一橋大学慶應義塾大学のファイナンス講座の指定テキストになっている。

デリバティブについて深く知りたい人

『フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系』ジョン ハル(2016)、金融財政事情研究会
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デリバティブに関する実務家であれば必ずと言っていいほど参照したことのある、極めて有名な本である。

デリバティブの評価に関する理論的背景と応用についてこの本を超える本はないと言ってよく、よく整理された内容、最新のトピックまでカバーする広範さは特筆に値する。

本書は慶應義塾大学九州大学のファイナンス講座の指定テキストになっている。

早稲田大学

コーポレート・ファイナンスIA(谷川寧彦)

『コーポレート・ファイナンス入門』砂川伸幸(2017)、日経文庫
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コーポレート・ファイナンス(大野高裕)

『コーポレート・ファイナンスの考え方』古川他(2013)、中央経済社
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コーポレートファイナンス(広田真一)

『コーポレートファイナンス』ブリーリー、マイヤーズ、アレン(2014)、日経BP
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この本は欧米のMBAでも用いられる世界的標準のテキストである。ファイナンスの基本的事項を幅広く網羅しているため、最初の一冊として手に取るにはとてもおすすめである。


ファイナンス(全日制)(岩村充)

『コーポレート・ファイナンス-CFOを志す人のために』岩村充(2013)、中央経済社
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『道具としてのファイナンス』石野雄一(2005)、日本実業出版社
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この本は実務家の中で好評を得ている本であり、ファイナンスの基本的な事項を確認しながら、実際に使うことを念頭に書かれているため、有用な本である。


ファイナンスのための数学基礎(山本芳嗣)

『数学概論 -線形代数/微分積分-』田代嘉宏(2012)、裳華房

コーポレート・ファイナンス(大村敬一)

『ファイナンス論』大村敬一(2010)、有斐閣

『コーポレートファイナンス』ブリーリー、マイヤーズ、アレン(2014)、日経BP
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『コーポレートファイナンスの原理』Ross,Westerfield,Jafee(2008)、金融財政事情研究会

中級ファイナンス論(大村敬一)

『ファイナンスの基礎』大村敬一・楠美将彦(2012)、金融財政事情研究会

著者は日本のファイナンス研究の第一人者で、優れた教育者でもある。本の内容はファイナンスの基礎的事項を広く網羅しており、意欲ある初学者が手に取るに相応しい内容である。

一橋大学

資本市場論Ⅰ 、Ⅱ (高見沢秀幸)

『新・証券投資論I 理論篇』小林孝雄・芹田敏夫(2009)、東洋経済
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この本はアクチュアリー試験や証券アナリストの指定テキストにもなっている本で、Ⅰ巻でファイナンスの基本的事項を、Ⅱ巻でその応用を論じている。とくに証券投資論に興味ある人にとって、必要事項をもれなくカバーできる。

『新・証券投資論II 実務編』伊藤敬介・荻島誠治・諏訪部貴嗣著(2009)、東洋経済
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『Excelで学ぶファイナンス②証券投資分析』藤林宏・袖山則宏・矢野学・角谷大輔(2009)、きんざい
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金融ファイナンスAⅠ (齊藤誠)

『金融技術の考え方・使い方』齊藤誠(2000)、有斐閣
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『金融』内田浩史(2016)、有斐閣
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『NLASマクロ経済学』齊藤誠・岩本康志・太田聡一・柴田章久
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金融数理論 (篠原克寿)

『道具としての金融工学』藤田 岳彦日本実業出版社
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『金融工学入門』デービッド・G.ルーエンバーガー日本経済新聞出版社
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派生証券理論   足立 高徳

『新版 ファイナンスの確率解析入門』藤田岳彦(2017)講談社

慶應義塾大学

ファイナンス概論(新井拓児)

『ファイナンスのための確率解析 I』シュリーヴ(2012)、丸善出版 

ファイナンス数学Ⅰ(二宮真理子)

『金融工学入門』デービッド・G.ルーエンバーガー日本経済新聞出版社
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ファイナンス特論(ADVANCED FINANCE)(植松俊一郎)

『フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系』ジョン ハル(2016)、金融財政事情研究会
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この本はデリバティブに関する実務家であれば必ずと言っていいほど参照したことのある、極めて有名な本である。デリバティブの評価に関する理論的背景と応用についてこの本を超える本はないと言っていいだろう。


東京大学

ファイナンス(齋藤大河)

『コーポレートファイナンス応用編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版

『数理ファイナンスの基礎』国友直人・高橋明彦,(2003)、 東洋経済新報社
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『マルチンゲールアプローチ入門』村上秀記(2015)、近代科学社
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ファイナンスのなかで、特にデリバティブ評価理論に興味のある人は、この本が大変有用である。ファイナンスの基本定理と呼ばれる重要な性質に立脚し、ブラック・ショールズ式とさらに複雑な金融商品に関する理論が学べる。

数量ファイナンスⅠ、金融経済学(高橋明彦)

『Microfoundations of Financial Economics』Yvan Lengwiler(2006)、PrincetonUnivPress
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神戸大学

ファイナンス(岩壷健太郎)

『基礎から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門』手嶋宣之(2011)、ダイヤモンド社
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『道具としてのファイナンス』石野雄一(2005)、日本実業出版社
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金融論(西山慎一)

『入門テキスト 金融の基礎』藤木 裕(2016)、東洋経済新報社
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名古屋大学

金融(清水克俊)

『金融経済学入門』清水 克俊(2018)、東京大学出版会 

ファイナンス(高橋秀徳)

『コーポレートファイナンス入門編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版

大阪大学

ファイナンス(太田亘)

『新・証券投資論I 理論篇』小林孝雄・芹田敏夫(2009)、東洋経済
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『コーポレートファイナンス入門編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版
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コーポーレートファイナンスのテキストとして標準的な本であり、基本的事項から実務的な応用トピックまで幅広く扱っている。初学者が混乱しないよう、多くの実例を交えている点もうれしい。

『コーポレートファイナンス応用編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版

千葉大学

金融経済学(金子文洋)

『金融経済学の基礎』池田昌幸(2000)、朝倉書店  

ファイナンスの経済学的基礎づけについて、日本語でこの本を超えるものはない。金融経済学と呼ばれるファイナンスの一分野について、深く探求したいと考える人にとっては必読の書である。

『Theory of Financial Decision Making』Ingersoll(1987)、Rowman & Littlefield Pub Inc

『Foundations for Financial Economics』Huang and Litzenberger(1988)Elsevier Science Ltd
商品リンク、目次



京都大学

経営財務(千葉早織)

『コーポレートファイナンス入門編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版

東北大学

ファイナンス(室井芳史)

『コーポレート・ファイナンスの考え方』古川他(2013)、中央経済社
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東京工業大学

ファイナンス(岩澤誠一郎) 

『Entrepreneurial Finance: Finance and Business Strategies for the Serious Entreprenuer』Steven Rogers and Roza Makonnnen(2014)、McGraw-Hill Education
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九州大学

数理ファイナンス (松本浩一)

『フィナンシャルエンジニアリング―デリバティブ取引とリスク管理の総体系』ジョン ハル(2016)、金融財政事情研究会

北海道大学

ファイナンス理論(吉川大介)

『ファイナンス理論入門』木島正明・鈴木輝好・後藤允(2012)、朝倉書店
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コーポレート・ファイナンスのテキストは「ブリーリー・マイヤーズ・アレン」と「バーク・ディマーゾ」のどちらを選ぶべきか

コーポレート・ファイナンスのテキストとして人気を二分するのが、

『コーポレートファイナンス上・下』ブリーリー、マイヤーズ、アレン(2014)、日経BP(以下BMA)
『コーポレートファイナンス入門編・応用編』ジョナサン・バーク、ピーター・ディマーゾ(2014)、丸善出版(以下BD)

である。

この二冊はどちらも有名であるとともに、内容も大変充実しているので、どちらを読むべきか甲乙つけ難く思う読者も多かろうと思うので、ここに比較を述べておく。

まず、どちらも扱うトピックに差はない

どちらもファイナンスを初めて学ぶ人間にとって十分な質とトピックを網羅しているため、究極的には各々のテキストの雰囲気が好きな方を手にとると良い。

敢えて違いを上げるとすれば、
  • ファイナンスの基本であるCAPMにBMAは40ページを割く一方、BDでは50ページを割き、後者は金利が異なる場合などの応用論点にも節があてられている。
  • 現代的な意思決定ツールであるリアルオプションに、BMAは40ページ、BDは50ページを割く。
  • 金融工学の金字塔ブラックショールズモデルに、BMAは10ページ、BD15ページを割く。
  • BMAは実例が多く、数式と実例からイメージを膨らませていく。
  • BDは計算例が多く、図、表、計算例も多用していて実践的。
  • BMAは多色刷りでフォントが見やすく読みやすいが字が小さい。
  • BDはボールド体の見出しやキーワードが、わかりやすくもあり、ごちゃごちゃした印象も受ける。
  • BMAは上巻でファイナンスの基本事項を説明し、下巻で応用論点と実務トピックをカバ一する。
  • BDは入門編でファイナンスのツールを総ざらいしてから、応用編で応用する。
  • BMAはコーポレートファイナンスの意義と財務担当者についての説明から始まり、現在価値、債券、株式、意思決定と続く。デフォルト確率についての記述がある。
  • BDはまず会社とはなにかについて述べ、財務諸表分析、現在価値、債券、株式、意思決定と続く。資金調達を短期長期に分け詳説している。
このように、各々少しばかりの特色はあれど、内容面で大きな差異はない。

文章の体裁には大きな違いがあるため、見た目の雰囲気が好きな方を手に取るといいだろう。

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